不動産相続の
よくあるトラブル・ご相談例
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不動産相続のトラブル・相談事例を知って対策を考えよう
トラストエージェントは、滋賀県彦根市にある不動産会社です。相続に関するプロフェッショナルとして、さまざまな相談案件に対応しています。不動産相続は「慣れていないこと」ばかりで、トラブルも起きがちです。実際のトラブルや相談例を参考に、対策を見出していきましょう。
ケース01.兄妹3人が相続で争っている
状況
- 長男は父親の介護をしながら実家で同居
- 次男と長女は実家を出て一人暮らし
- 長男は父親の死後、母親と共に実家に住み続ける方針
- 次男と長女は実家の持分を要求
トラブルのポイント
- 長男には金銭的な余裕がない
- 長男は代償分割ができないことから支払いをめぐりトラブルに
解説
次男・長女には「法定相続分」があり、持分を相続する権利があります。この場合、長男が次男・長女に持分を現金で補償する代償分割を行うのが理想ですが、不動産評価額は数千万円単位になる場合があり、代償分割ができるケースはそれほど多くないのが現状です。
母親は幸い健在で、長男は母親との同居を希望しています。この場合、まずは母親と長男が実家を共有して相続するのが得策です。次に、「預貯金を次男・長女に均等に割り振る」「残りの法定相続分を代償金として支払う」ことが現実的な方法となります。
代償金は、次男・長女の同意を得れば分割でも支払えます。それが難しい場合は実家を売却して平等に遺産分割を行った後、母親と長男が共同で新居を購入する方法もあります。
ケース02. 使用用途のない実家が空き家化してご近所トラブルに発展
状況
- 親から不動産を相続したものの管理ができていない
- 仕事が忙しく、空き家の換気や庭掃除を怠ってしまった
トラブルのポイント
- 数年ぶりに実家を訪れたら「台風の日に瓦が飛んできて危なかった」とご近所から苦情を言われた
- 空き家状態が続き、行政から「特定空き家」に指定されるリスクがある
解説
使用用途のない空き家は、相続した時点で売却をおすすめします。放置状態が続くと、年々資産価値は落ちていき、いざ売却したときに期待通りの金額を得られないことも。また、管理を怠った空き家は外壁や瓦が崩壊して、通行人やご近所に危害を与えてしまうリスクがあります。
2015年には「特定空家等に対する措置」という法律が施行されており、行政から「特定空き家」に指定されると固定資産税・都市計画税の優遇措置を受けられなくなります。結果的により多くの税金を払う必要が生じるので、負担になるだけの空き家は早期売却を検討しましょう。
不動産売却には、不動産会社に買主を探してもらう「仲介売却」と、不動産会社自身が買主となる「不動産買取」があります。立地があまり良くない不動産でも、不動産会社が「再販できる」と判断すれば、不動産買取が実現する可能性もあるのです。負担にしかならない空き家をどうにか処分したいと思ったら、まずは不動産会社に相談しましょう。
ケース03.収益物件の賃料をほかの相続人から請求されている
状況
- 父親は生前に収益物件を所有
- 賃貸経営を任された長男が家賃収入で生計を立てている
- 妹二人(長女・次女)は家賃経営には関与していない
トラブルのポイント
- 長女・次女が賃料の分割支払いを要求
- 遺書はない
解説
この場合、法定相続人である長男・長女・次女それぞれに収益物件を相続する権利があります。長女・次女は今までで賃貸経営に関与しておらず、収益を受け取ってこなかったため、長男は妹二人に対し、経費を差し引いた収益の3分の1ずつを支払う必要が生じます。遺言書がないので、遺産分割が完了するまでの間財産は「共有物」として扱われます。そのため、その間に得た収益も3分割する義務が生じるのです。
収益をどの割合で分割するかは、兄妹の話し合いで決められます。今後も長男のみが賃貸経営に携わる場合、これにさらに労力がかかると考えられます。そのため、長男に多めの配分が行き渡るよう調整することがおすすめの方法となります。
ケース04. 相続登記や相続税の納付を期限内に行えなかった
状況
- 親が交通事故で突然亡くなり、葬儀などと並行しながら相続手続きを行うことに
- 故人の所有財産を把握できていなかった
- 遺言書もなく、必要書類の保管場所も故人以外知らなかった
トラブルのポイント
- 必要書類が揃わず、期限内に手続きが行えなかった
- 故人の不動産を相続するにあたり相続税が発生したが、手持ちの資金で補えなかった
解説
相続登記は2024年4月から法律で義務化されており、相続を知った日から3年以内に申請を行う必要があります。これを行わないと不動産の売却すらできません。相続登記には戸籍謄本など多くの書類が必要になります。被相続人の「出生までさかのぼった戸籍謄本」が必要になり、複数の相続が発生している場合その数だけ戸籍を用意しなければなりません。
また、遺産総額が「相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」を超えると相続税の納付義務が生じます。申告・納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。これができない場合税金滞納状態となり、遅延日数に応じた遅延税がかかってしまいます。
こうした事態を避けるためには、被相続人の所有財産などについて生前から話し合っておくことが重要です。不動産を複数所有している場合、相続税は発生しそうか、手持ちの資金で補えるのかを把握しておけば、葬儀などで余裕のない場合も冷静に対処できるでしょう。必要書類の準備など、専門的な知識が必要な場合は不動産会社などプロに相談するのもおすすめです。どの書類がいつまでに必要なのか把握できるほか、用意できない場合の対策も相談できます。
ケース05. 生前贈与された土地の評価額を巡って相続人同士で揉めている
状況
- 長男が父親から土地を生前贈与されていたことが判明
- その後父親は認知症になり遺言書を作成できなかった
- 土地の評価額は10年で2倍になった
トラブルのポイント
- 長男は土地の評価額を10年前のままと主張
- 妹である長女は現在の評価額を主張し対立
解説
長男が生前贈与された土地は「特別受益」とみなされます。これにより得た財産の評価額は、相続が発生した時点の評価額をもとに計算します。そのため、土地の評価額は生前贈与から10年経ってからの金額になるのです。
土地の価格について、長男は「できるだけ安くしたい」、長女は「できるだけ高くしたい」と、お互いの利益を主張した結果このような対立が生じました。結論がまとまらない場合、裁判所で鑑定を受けるという選択もあります。ただし、鑑定には50万円前後の費用が必要になります。不動産会社による査定を受け、話し合いで金額を調整すると支出を減らせるでしょう。
ケース06. 法人所有の不動産を巡る事業承継や資産整理のトラブル
状況
- 亡くなった代表取締役が法人名義で収益不動産を所有
- 法人を事業承継する予定だが、不動産の運用や売却方針をめぐり株主間で意見の対立が発生
- 不動産の運用益を法人運営資金に充てるべきか、売却して法人の負債返済に充てるべきかで議論
トラブルのポイント
- 株主間で不動産の運用方針が合わない
- 収益不動産が複数の株主に利益を公平に分配できるか不透明
解説
法人名義の不動産は、通常、法人資産として取り扱われます。しかし、代表取締役が亡くなり、事業承継や株式の移転を通じて新たな経営者や株主が関与する場合、不動産の運用や売却について意見が分かれることがあります。特に収益不動産の場合、その利益の配分や長期的な運用計画が明確でないとトラブルに発展しやすいです。
このようなケースでは、法人の経営方針や株主間の合意形成が鍵となります。以下のような方法を検討することが有効です。
事前の定款変更や議事録の作成 | 不動産運用に関するガイドラインを明文化しておく。 |
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専門家の介入 | 不動産の適正な評価を行い、運用プランや売却益の配分について公平性を担保。 |
株主総会での決議 | 売却や運用の方針を株主総会で決議し、合意を得る。 |
また、法人内での管理が難しい場合、不動産管理会社や不動産会社に相談し、専門家の意見を基に解決策を探るのも良いでしょう。法人名義の不動産は運用次第で法人価値を大きく左右するため、慎重な判断が求められます。